日本では,ダイバーシティ・マネジメントは企業を強くするための人材戦略,組織戦略というポ ジティブなイメージを付与されている。しかし,米国の研究では,ダイバーシティは,必ずしも組 織のパフォーマンスにプラスの効果をもたらすとは限らないという結果が出ている。米国と日本で, ダイバーシティ・マネジメントに対するアプローチに違いが出るのはなぜだろうか? この問いに 対して本論文は,「フォールト・ライン理論」を用いて考察する。「フォールト・ライン理論」は, ダイバーシティが期待された成果をもたらす場合と,もたらさない場合を分ける要因を特定しよう とする。本論文の貢献は,日本のビジネス社会という個別具体的な文脈において,ダイバーシティ・ マネジメント研究を次の段階に進める方向性を示すことにある。