本研究では,対人不安傾向の高い人のコミュニケーション時の状態不安が,対面の場合とcomputer-mediated communication (CMC) の場合とで異なるのかという点について検討を行った(実験1).また,対人不安生起に関連すると考えられる要因について,両メディアの間における差についても検討を行った(実験2).結果は,対人不安傾向の高い人は,CMCにおいても対人不安傾向の低い人よりもコミュニケーション時の状態不安が高く,不安生起に関連する要因の検討でも多くがネガティブなものとなっていることが示された.これらの結果は,匿名性の高い,自己の特定されにくいCMCという状況にあっても,他者との関係性をネガティブに認知するために,不安が生起するという可能性を示している.つまり,対人不安とは,ネガティブにとらえている自己が特定されない場面であっても,他者との関係性が自分にとって望ましくないものと認知することで,生起するものであると考えられる.