『ハンナ・アーレントの 『人間の条件』再考 -世界への愛-』
今出敏彦
アーレントの思想的核心,「世界への愛」の意味は,人間が自らの生を自覚し,問いかける能力を喚起することである。我々は死すべき運命にある人間であるが故に,「不死」と「永遠の命」に憧れる。ただ,そのどちらか一方を選ぶことは困難である。しかし,だからこそ,この問いを諦めない可能性が,人間の条件なのであり,この可能性こそが,最も平和を脅かすもの,つまり,無思考性を抑止する知的営為を保証するものであると結論づける。
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